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鈴木 勝 教授
大阪観光大学観光学部教授。元JTBアジア日本支社長の経験をいかし、観光業界のリアルな問題とその解決方法、アジア太平洋地域の観光促進について研究している。
著書 「国際ツーリズム振興論−アジア太平洋の未来−」(税務経理協会) 「中国人とうまくつきあう法」(日中出版) 「オーストラリア学入門“コアラの国”の法律あれこれ」(早稲田経営出版)
鈴木 勝 研究室ホームページ >> http://www2.meijo.ac.jp/mei-suzu/
 「観光学ドットコム2003」では、「観光立国・日本」に向けて、10回にわたって具体的に種々の提言を行ってきました。これらの意見に対して、全国から、または海外から賛同や質問のメールが多く寄せられ、ほんとうに嬉しく思います。今年度の「観光学ドットコム」は本学の教授の持ち回りで、種々のオピニオンを発信することになりました。初回の担当者として、一年余り経過した「ビジット・ジャパン・キャンペーン・その後」を、最近の状況に照らし、少しばかり意見を発したいと思います。

 これはつい最近の新聞報道です。「2010年に訪日外国人旅行者1,000万人が目標だが、昨年は521万人・・・、国際ランキングは韓国よりひとつ下の33位だった・・・、小泉首相自らが出演する海外向けのテレビコマーシャル。英語で『ようこそ、日本』などと語りかけているが、企画した政府内からも、「首相に『来て』と言われたからといって、行く気にはなれない」と、『ビジョン先行、道のり遠く』のタイトルを付して、誠に冷ややかな論調です(日本経済新聞2004年5月25日朝刊)。正直言って、私も同様の気持ちです。
 さて、昨年1月の小泉首相の施政方針演説、「わが国の文化・観光魅力を全世界に紹介し、訪日外国人旅行者の増加とこれを通じた地域の活性化を図る」と“観光立国”への道を表明して以来、たしかに新聞、雑誌、テレビなどのメディアを通じて、「観光」の文字が登場するようになっています。観光学を専門とする身として、誠に喜ばしい限り。しかしながら、長らく海外の観光立国のお手伝いをしてきた経歴から見ると、観光振興キャンペーンを推進する日本で、気になる−観光振興を阻害する−現象が少なくありません。今回はこれらを取り上げてみたいと思います。

<事例その1>「観光振興会議、なぜ、こんなに女性メンバーが少ないのでしょうか?」
「4/80」、「11/110」・・・これらは、ある大都市圏での官民合同観光振興会議の全出席者に占める女性の出席者数。前者は関西圏、後者は中部圏で最近行われた大規模な観光キャンペーン会議。海外諸国の観光振興会議に、長年出席した私にとって、日本の観光会議は異様な雰囲気です。「海外を見習う必要はない。日本流で行けばよい」・・・こんな声が聞こえてきそうですが、1,000万人の訪日外国人を迎え、彼らが日本を満喫し、リピーターとして、また、日本を訪れる・・・このような環境にするには、女性の役割、特にレディース・ホスピタリティに頼らなければ達成は難しいと思っています。したがって、議論の段階から大いにインボルブしてもらう必要があります。海外観光セールス・プロモーションにも大いに活躍してもらいたい。現在の政府・地方自治体、経済界による観光ミッションは“黒ずくめ”。もっと“華やかな、明るいムード”の観光会議&ミッションに変身させてはどうですか? 観光先進国(地域)と呼ばれる、オーストラリア、シンガポール、香港、中国などは女性メンバーが大活躍し、実際の誘致に威力を発揮しています。これは、ある女性参加者からのつぶやきです。「日本の観光会議は、権威的なんです」。今でもこの言葉が耳から離れません。
 ついでながら、地域的男女構成比に関して、東京首都圏はどうかというと、会議には女性が比較的多く参加。「日本の観光会議は、首都圏を離れるにつれて、男性のシェアは高まっていく」・・・このような仮説を現在、立てています。

<事例その2>「観光ガイド教育、誰が行っているのでしょうか?」

 現在、訪日外国人500万人は、ビジネス出張や親戚知人訪問のシェアが比較的に高い。一方、これからターゲットとする1,000万人は、純粋のツーリストの割合が多くなることは当然。こうなれば、彼らを案内する通訳・ガイドが多く必要となる。その上、“単なる観光”でなく、やれ産業観光(TV:テクニカルビジット)だ、やれ修学旅行だ、やれ世界遺産巡りだとなれば、案内ガイドの質をさらに高めなければならない。加えて、現在の政府・地方自治体による海外セールス・ミッションの行き先は中国や韓国が多い。そうなれば英語に加えて、中国語やハングルのガイドが今まで以上に必要になってくる。このような状況にありながら、観光ガイド育成の声は全国から、ほとんど聞こえてこない。時折、“ボランティア・ガイド”というシステムに頼ろうとの姿勢が伝わってくるのみ。周知のように国際観光振興政策上、いかにリピーターを誘致できるかが重要な“鍵(キー)”。それには、日本の良さを十分伝えることができるプロのガイドが、観光立国・日本へと大きく前進させる力を持つ。このようなことを考えると、“促成栽培できない”プロフェッショナル・ガイドの養成に一日も早く着手する必要があります。同時に、民間外交官としての観光ガイドのステイタス・アップも考慮して・・・。

<事例その3>「テン・ミリオン(1,000万人)計画、その後、なぜ、具体的な数値目標が出てこないのでしょうか?」
 2010年での目標ができたのですが、その後、具体的な数値がぜんぜん出てきません。いわゆる“観光立国・マニフェスト”版です。たとえば、「2010年まで毎年どのように伸び率を目論むか」、「どのような国々から訪日を期待し、人数はどのくらいになるか」などでしょう。ターゲット数値が出てこないと、地方自治体も民間企業も方向性が定まらない。たしかに、不確定要因(例:中国へのビザ発給箇所拡大や状況、イラク戦争、テロetc.)は多いと思われるが、目標算定の手法はいくらでもあります。 

 ところで、最近のオーストラリア政府による訪豪中国人旅行者予測(2004-2012)を紹介しましょう(2003年12月現在)。
オーストラリア政府による
「中国人観光マーケット予測」


<参考>
オーストラリア政府観光局(ATC)
http://www.atc.net.au/
 2012年まで大胆とも思える数値設定を行い、加えて、中国人マーケット分析を紹介しています。「北京はヤング(独身およびDINKS)、上海は若年ファミリー、広東省は年配の家族」をターゲットにしたらどうですかと、政府によるきめ細かな「中国市場アプローチ戦略」がアドバイスされています。これらの内容を推察すると、観光立国・オーストラリアのマーケティング力に対して、ウーンと言わざるを得ない。それだけ、観光振興への熱意がある証拠なのだろうと考えています。

<事例その4>「訪日外国人ビザ問題、柔軟的方法がもっと、いろいろあるはずです!」
 韓国からの修学旅行生に続き、今夏から中国人学生の修学旅行にビザが免除され、両国からの若者の訪日に熱い視線が寄せられています。しかし、社会一般的には治安面などを理由に、まだまだ抵抗感はありますが、「ビザ緩和政策」に関して、もっとスピードを速め、戦略的な手法を取るべき段階であると思っています。もちろん、海外諸国を一律に対処すべきものでなく、免除手法も種々あります。例えば、“関西空港48時間ビザなしトランジット(通過)”方法や、“50歳以上ビザなし”、“愛知博期間ビザなし”、“沖縄限定ビザなし”・・・「地域・期間・年齢etc.限定ビザ免除」など柔軟な手法がいくらでも考えられます。世界を見渡せば、“観光先進国”、または“観光立国”と称される国々は、いろいろな工夫をしています。
 締めくくりに一言。ビジット・ジャパン・キャンペーン2年目、日本および日本人の外国人誘致の熱意が、まだまだ世界に伝わっていない気がします。  <了>
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