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第5回 2003.10.20
観光振興の“プロフェッショナル”はどこにいるのですか?
―『アウトバウンド&インバウンド』観光の仕掛け人―
 一国の国際観光を振興させる手順をゴク簡単に述べれば、「宣伝」→「誘致」→「受入」の段階をたどります。もちろん、各々のステージでプロフェッショナルが必要ですが、最近の日本の国際観光分野では「誘致」段階が特に重要で、観光振興の成否を左右すると言っても過言でありません。すなわち、旅行会社などの企画担当者、いわゆる「トラベル・プランナー」と呼ばれるプロが実践的に行う誘致戦略の場面です。彼らは国際観光の“仕掛け人”とも言われています。

 今回は、国際観光の両分野―「日本人の海外旅行&外国人の訪日旅行」―において、現在の日本にこれらのプロフェッショナルがいかに少ないか、そして彼らの養成が「観光立国・ニッポン」を目標としたわが国にとって急務であることを、ここで訴えたいのです。
すでに当コラムで述べてきたように、日本はグローバル化する大交流の中で、ここ一、二年、官民学で力を入れ始めた訪日外国人観光に偏ることなく、日本人の海外旅行分野も含め、双方向の流れが“いびつ”状態を解消した姿で、かつ拡大基調で進むことが肝心です。

 まずは、最近の「日本人の海外旅行」を見てみましょう。国際交流を阻害する事故や事件が世界的に相次いでいます。2001年にはアメリカ同時多発テロ、本年はイラク戦争やSARS(新型肺炎)が発生。他方、経済不況の中、消費者マインドの冷え込みで、価格志向に一層、拍車がかけられている。このような境遇下では、日本人海外旅行客の種々のニーズを汲み取る、いわゆるマーケティングに通暁した“仕掛け人的”異色のプランナーが強く期待されています。

 しかし、現実はどうでしょうか。毎年、日本人旅行客1,600万人に上っていますが、これらの旅行者に対して、“価格訴求”のパンフレットばかりが次から次に旅行会社のカウンターに並んでいます。したがって、アメリカ同時多発テロ、イラク戦争、SARSなどが発生すれば、海外旅行ムードはいっぺんに吹き飛んでしまう始末。その結果、次のような旅行プロの言葉になってしまうわけです。「(アメリカ同時多発テロ時に)はっきりとした目的のある旅行が増えていれば、これほど日本人の旅行は減らなかったのかもしれない。芸術や音楽などの魅力ある素材を生かした商品企画が必要である」(近畿日本ツーリスト社長・高橋秀夫氏)。

現在、内容で勝負する旅行商品の登場が期待されているにもかかわらず、価格競争に走り、その結果、類似ツアーが氾濫し、いつまでたっても企画力のアップがなされず、企画上のノウハウの蓄積に結びついていない。したがって、日本全体に企画プロが育っていません。また、企画プロが育たないのは、旅行会社の経費削減やリストラのため、プランを練る人と経費がカットされている背景もあります(したがって、企画分野を補助しているのは海外の旅行会社、いわゆる「海外ランドオペレーター」となる)。 
かくして、日本の旅行会社の企画部門はさらに弱体化していく構図になっています。
今一度、「企画プロ」が旅行産業存続の生命線であることを再認識する時期であろうと、つくづく思っています。

 他方、近ごろ、観光業界でにぎやかになってきた「訪日外国人観光」はどうでしょうか。結論をまず言えば、アウトバウンド観光以上に、弱体化しているのがこの分野の企画プロの実態といえそうです。首都圏東京を離れ地方に行くと、その傾向はさらに強まっています。
 ところで、「観光立国・ニッポン」の掛け声とともに、最近、“にわか観光プロ”があちこちに現出し、政府・地方自治体主催での観光振興会議では、彼らを囲んでの抽象的論議が少なくありません。現在はより具体的なアクション・プログラムに的を絞って、議論を闘わすべき段階であると思っていますが、どうでしょうか。

 ここでインバウンド観光の企画プロに関してちょっと言及すると、例えば、大手旅行会社のJTBや近畿日本ツーリスト、格安航空券などで名を馳せているHISの○○支店長が、旅行作りのプロフェッショナルかというと決してそうではない。ツアー販売のための流通チャンネルに通じているが、旅行企画となると別物である。また、添乗員、いわゆるツアー・コンダクターを何十年経験したからといって、ツアー企画のプロかというとそうとは限らない。旅程管理者として旅行事情のプロと言えても、企画プロとは異なっている。誘致戦略を実践的に行うとなると、プランナーとしての訓練をある程度経ないと旅行作りは難しい。現在の日本には、インバウンド観光そのものが長期間、ないがしろにされてきたこともあって、プランナーが育っていないし、現在の状態では増加することは望めない。実業界にあっても、また教育・学術界においても早急に養成の対策を講じなければならないと思います。

 では、彼らが育つ当面の間どうしましょう。身近な企画プロの転用を図り訪日外国人を活性化に導くのも一案。上述した「海外ランドオペレーター」や「外国政府観光局」の日本人マネジャーには、企画プロと呼べる人材が少なくない。特に、後者のマネジャーには海外諸国の厳しい観光振興競争の中を生き抜いているだけに、プランナーとして有能な人材が多い。彼らに日本の魅力の引き出しやイベント作りなどで、日本誘致を図らせた方が即効的といえます。
本稿の終わりに・・・。シンガポール政府観光局のある日本人マネジャーの言葉を紹介したい。「私に、日本をお任せください。四季も、温泉も、雪も、歴史もないシンガポールに毎年、70万〜80万人の日本人を誘致しているのですから・・・」。(了)
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