 |
第3回 2003.8.20
『観光後進国ニッポン、“外国人の力”をもっと借りたら?』
(訪日ツーリズム・キャンペーン 第2弾) |
前回は『2010年にテン・ミリオン(1,000万人)』の訪日外国人誘致計画に関して述べましたが、今回は実践編で、この倍増プランの推進に「外国人の力」、それも“観光のプロの力”を、もっと借りたらどうですかという提案。ここ1、2年、日本のあちこちで観光振興論が取りざたされていますが、このアイデアはまずは出てきません。
現在、外国人誘致プランに外国人のナマの声はほとんど反映されておらず、日本人同士で相談しあう“島国・日本”がここにも登場、実効ある訪日ツーリズム運動になっていません。もちろん観光活性化に、日本&日本人の「自立精神」は大事ですが、外国人(外国企業を含む)の力をもっと借りることにより、大いなる進展が望め、同時に国際理解・協調が深まるというメリットもあることを力説したいのです。
まず、第一に「外資系ホテルの総支配人と組織の力」。近年は外資系ホテルの日本進出ラッシュ。「ザ・リッツ・カールトン」、「ウェスティン」、「マリオット」、「フォーシーズンズ」、「メリディアン」、「ヒルトン」、「シェラトン」、「ハイアット」などがお目見え、また、この2、3年内には「ペニンシュラ」、「セントレジス」、「マンダリン・オリエンタル」などの超高級ホテルも進出予定。外国人誘致に、これらのホテルの総支配人と組織の力を借りましょう、ということなのです。元来、これらのホテル進出は、海外ビジネス出張者を狙ってはいますが、主体は日本人マーケット。したがって、海外に向かって積極的に働きかける体制にはなっておらず、日本における、いわば“限られたパイ”を、外資系ホテルと日系デラックスホテル・高級旅館が奪い合っているのが現状です。
ひるがえって、海外の観光立国、例えばオーストラリア、シンガポール、タイ、香港、中国などの観光振興活動はどうなっているのでしょうか。そこでは外資系ホテルが先頭に立って外国人誘致を行っているのです。海外への観光セールス・ミッションにはさまざまな国籍の総支配人が積極的に参加。各国では政府が中心にやってきたように見えますが、彼ら抜きでは、現在の観光隆盛は果たせなかったといっても、言い過ぎではありません。
一方、日本における観光活動には、日本のことは日本人でという意識も強く、また外資系ホテルが日本の組織(政府・ホテル協会など)に入りにくく、一線を画しています。長期的展望に立てば、彼らがインバウンド活性化組織に参画し、前面に出て行動できる体制を早急に構築することを強く要望したいです。智恵とともに世界ネットワークを同時に活用すれば、テン・ミリオン計画は大きく前進すること、間違いありません。
二番目に、インバウンド事業分野での、経験豊富な外国人マネジャーの採用。外国人が進出しやすい日本の企業組織や法制を整えることです。組織への組み込みに関して、官レベルでは、国際観光振興会や地方自治体などの海外事務所トップに外国人マネジャーを積極的に採用すべきであり、民間では、JTBや近畿日本ツーリストなどの大手旅行会社は部長・課長クラスに外国人を採用したらどうでしょうか(民間では、すでにその兆しがでています)。身近な事例では、オーストラリアやニュージーランド政府による中国マーケット戦略には、中国人を活用していますし、在日本の各国政府観光局代表には、日本人が多く選ばれ効果を挙げているのです。法制面では、有能な外国人マネジャーへの労働ビザの容易な許可なども考慮する必要があります。
三番目に、外国企業のインバウンド事業への参画を歓迎する環境作り、と同時にこれらを「観光貢献」と認める社会環境を整えること。日本には、いわゆる「民族系」と呼ばれる旅行会社があり、中国人や韓国人を取り扱うアジア系旅行オペレーターが主流です。現在、訪日中国人の旅行取り扱いの2/3はこれら民族系であり、他方、韓国人の90%近くが韓国系旅行会社を利用しています。日系旅行会社でなく民族系を利用する理由は、主に低価格、ノウハウの優位性、コネなど。日本のインバウンド事業には民族系旅行会社の力が不可欠であり、それ以上に訪日外国人振興やインバウンド事業のメンバーとして、フォーマルな組織に加えることが重要になってきます。また、日本に拠点を持つ外資系旅行会社、例えば、豪カンタス航空関係旅行会社や中国国際旅行社などは、アウトバウンド業務中心であり、これらを訪日外国人ビジネスに向かわせる政策を考案することが、身近な観光プロの力を借りる一例でしょう。
先日、インバウンド振興に、思わぬ外国企業が名乗りを上げました。それは、GDS(注)の「アマデウス・グローバル・トラベル・ディストリビューション」。日本国内の鉄道やバスなどを航空券とともに予約できるシステム開発を試み、欧米市場ではすでにユーロスターやアムトラックも取り組んでいます。日本人の誇るJR新幹線は、世界で有数のネットワークと時間の正確性を持ちますが、外国人旅行者にとっては海外から予約できないことが大きな障害となっていたのです。日本人にはまったく信じられず、日本観光振興の盲点ともいうべき事由でしょう。このように外国人&企業が日本に進出することにより、外国人の日本旅行が円滑、さらに増加し、日本経済が活性化する一方、振興活動の過程で、日本国内で国際交流・国際理解が図られるメリットも見逃せません。
ついでながら、「外国人の活用」で気になるのは、政府主導により実施されている日本人対象の「観光カリスマ百選」。現在、訪日外国人は500万人と少ないながらも、“日本よいとこ”と外国で懸命に宣伝している人々がいます。(私の)知人にも、日本通のオーストラリア人、シンシア・メナデューさん(故人)という方がいました。彼女は「大使夫人民宿の旅
ワルツィング・マチルダ日本をゆく」(サイマル出版会)という本を出版し、毎年何度か豪州人を連れて来日。彼女に匹敵する外国人は、現在世界に少なくありません。「観光カリスマ」に関して厳しく言えば、“身内で称え合う”以前に、まず外国人を顕彰すべきであり、次に日本人でしょう。世界の例を見れば、外国政府から当該国の観光振興の尽力を称えられ、日本人や日本企業がずいぶん表彰されたり勲章を授与されたりしているのですから。(了)
(注)GDS:主に旅行代理店がユーザーとなり、航空券、列車、レンタカー、ホテルなど旅行に関する予約業務を行うためのシステム
|
|