 |
第2回 2003.7.15
小泉首相は言いました。『2010年に、訪日外国人を1,000万人にしよう!』と。しかし、みなさん、問題は「倍増計画の中身」なんです!
(訪日ツーリズム・キャンペーン) |
小泉首相は2003年1月の施政方針演説の中で、「わが国の文化・観光魅力を全世界に紹介し、訪日外国人旅行者の増加とこれを通じた地域の活性化を図る」と“観光立国”への道を表明し、『2010年はテン・ミリオン(1,000万人)』の訪日外国人誘致プランを発表しました。これを受け、2003年を『訪日ツーリズム元年』と位置づけ、観光立国の道を歩みだしたのです…という事情をご存知の方は観光関係者と国民のごく一部だけであり、日本人の大部分は知りません。ましてや、訪問してもらいたい外国人の耳にはまったくといっていいほど届いていません。
ところで、なぜ、小泉首相は急に「観光振興」を言い出したのでしょうか。この理由を少しばかり。現在、日本経済が低迷する中で、「観光」を、需要喚起に直結する、即効性ある景気浮揚策の“切り札”として考えたのです。すなわち、外国人を日本に誘致し金を落としてもらい、あわせて雇用をアップさせようとする意図からスタート。同時に「外国人による日本の理解不足」や「文化交流面での弱さ」をバンカイしようとする作戦なのです。数値面で言えば、国際観光の極端な“いびつ”状況―「日本人海外旅行者1,600万人
vs. 訪日外国人500万人(3:1の比率)」―の是正策なのです。
さて、ここで提起したいのは、「問題はテン・ミリオン(1,000万人)計画の中身だ」ということ。目標数字はキレが良すぎて、裏づけがあったようには決して思われません。なぜならば、これまで「ウエルカム・プラン21」(2005年に700万人:1996年発表)、「新ウエルカムプラン21」(2007年に800万人:2000年発表)があり、その延長線上の倍増計画なのだから。今度の目標も、なにやら「実行の先送り」で、責任逃れ的状況に思えるのは私だけでしょうか。しかし、今回は首相が強くインボルブしている背景もあり、また、先日の「小泉内閣メルマガ」100号記念での決意表明、欧州訪問時における各国首脳に対しての日本アピールなど…本気さがうかがえるので、継続した熱意を期待したいです。
ところで、ここで重要なのは、実行の具体性の表明。7年後の最終的な数字だけでなく、その過程を国民に開示することです。(1)
2010年まで毎年どのように伸び率を目論むか、(2) どのような国々から訪日を期待し人数はどのくらいになるか、などでしょう。過去2回の計画には、ついにこれらの中身に接することができなかったことは残念です。したがって、これまでの計画は“成り行き任せ”と非難されてもしょうがありません。考えてみてください。一般企業経営では「20XX年5カ年計画」策定の場合には、キャッチフレーズだけでなく、毎年の指針となる数値が同時に発表されることは当然。今回の倍増計画においても、より細かな目標設定を是非、発表してもらいたいです。
今回、なぜ中身が重要であるかを力説するのは、下記の2つの理由から。まず、過去の経緯から、目標設定に伴なう責任を明確にさせ、進捗状況を明らかにする。そして、いつの間にか次の目標にすり替ってしまうような悪弊をなくそうということです。2番目に、現在、政府にしても地方自治体にしても、訪日外国人をアジア人、特に中国人にシフトする掛け声があちこちに聞こえ、過度のシフトを懸念するからであります。
一般に、国際観光を振興させる目的には、「外貨獲得」・「雇用政策」などの経済的側面、そして、「国際理解」・「国際平和」などの社会文化的側面があります。前者の見地では、訪れる外国人の中身は大きな問題ではなく、どこの国から来ても「数」を満たせばよく、アジアに偏重してもよい。しかしながら、後者を考慮した場合、世界各国から均しく訪日してくることが望ましいのです。現在、アジア64%、北アメリカ18%、ヨーロッパ13%、オセアニア4%、その他1%(2001年度・国土交通省発表数値を四捨五入)…これらのシェアを大きく崩し、一方に偏することは避けなければなりません(将来、むしろアジア人以外の比率を高める必要があるのかもしれません)。この点は、現在の訪日外国人誘致の論議の中では、まったく出てこないこと。いまから注意を喚起しておきたいです。
付け加えれば、一国または一地域に偏しない国際観光振興のメリットの1つに、今回のSARS(新型肺炎)禍がいい教訓にもなっています。もし、アジア人(特に中国人)にシフトした訪日外国人誘致キャンペーンが行われている最中に、“第二次”SARSが中国を中心にアジアを見舞った場合、惨めな結果に終わることでしょう。きっと。
(「訪日ツーリズム・キャンペーン」に関しては、まだまだ述べたいことがあり、回を改めて提言したいと思います)。 |
|