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第2回 2003.9.10
宿泊部門のホテリエたち
 前回、ホテルは、リーダーである「総支配人」を始めとして、「宿泊部門」、「レストラン部門」、「宴会部門」、「調理部門」、「マーケティング部門」、「管理部門」などによって構成されており、各部門のホテリエたちが、それぞれの専門能力を発揮しつつ、協力し合いながら、ホテルという“舞台”を創り上げていくということについて触れた。
 今回、これらの部門の中でも、ホテルの最も基本的な機能ともいえる「宿泊部門」に視点を当てて、宿泊部門には主にどのような職種があるのか、それぞれの職種の仕事内容や魅力はいかなるものなのかなどについて説明する。

フロントクラーク(front clerk)
 フロントクラークは、ホテルの中枢ともいえるフロントデスクを掌るホテリエである。
フロントデスクにおいて、宿泊客が到着した際に、お客様を出迎え、チェックインの手続きを行い、また、宿泊客が出発する際に、料金精算などのチェックアウトの手続きを行い、お客様を送り出す。
 フロントクラークは、チェックインの際には、ベルボーイ/ベルガールにお客様の客室への案内業務を引き継ぎ、チェックアウトの際には、ハウスキーパーに客室清掃業務を引き継ぐなど、まさに“宿泊部門の司令塔”ともいえる職種である。
 フロントデスクは、宿泊客のみならず、ホテルを利用するすべてのお客様に対する情報受発信の拠点であるため、その場所を預かるフロントクラークは、ホテルの施設案内、レストラン、宴会などの他部門の情報、周辺地域の交通事情や観光情報などの問い合わせに対して即座に対応できなければならない。また、郵便物の取り扱いや貴重品の預かり、外貨両替などの業務も担当する。
 フロントクラークは、幅広い業務を素早く的確に遂行することが求められるのであるが、ただ単に事務処理能力が高いだけでは十分とはいえない。お客様に対する接客能力、お客様や協力者である他のホテリエと良好な人間関係を構築する能力、不意のトラブルに対処するための危機管理能力などが必要とされる。また、外国人客の多いホテルのフロントクラークにとって英語などの語学力は必須である。
 フロントデスクに立つということは、ホテルの代表者として宿泊客を送迎するということであり、フロントクラークは、プライドを持って、この責任を果たしていかなければならない。

宿泊予約
 宿泊予約は、宿泊部門の主要製品である「客室」の予約受付ならびに販売管理を担当するホテリエである。宿泊を希望するお客様からの電話、FAX、E-mailなどによる問い合わせや予約申し込みに対応する。
 宿泊予約は、個人や法人、旅行会社など様々なお客様からの非常に多くの問い合わせに迅速に対応することが求められると共に、単に問い合わせに対応するだけではなく、客室の販売管理の担当者として、どのような客室を、どのような時期に、どのような価格で販売するのかを予約の状況を確認しつつ、あるいは、これから入るかもしれない予約を予測しながら、客室販売をコントロールしていくという高度な分析力ならびに判断力が求められる職種である。
 客室販売においては、今日販売できなかった客室を明日に持ち越すことはできないと同時に、今日ある客室数を超える客室を販売することはできない。すなわち、客室は、製造業が販売する「モノ」とは異なり、在庫ができない“製品”であり、それゆえ、宿泊予約による客室の販売管理の精度が宿泊部門における収益確保の鍵を握る。
 現代のホテル経営において、宿泊予約が求められる役割は益々重要になってきている。

ベルボーイ/ベルガール(bellboy/bellgirl)
 ベルボーイ/ベルガールは、ホテルを利用する多くのお客様が集まるロビー周辺において、多岐にわたるサービスを提供するホテリエである。チェックイン時における宿泊客の客室への案内やチェックアウト時における荷物の運搬ならびに保管などと共に、宿泊客に限らず、ホテルを利用するすべてのお客様に対するホテルの施設案内、あるいは周辺地域の交通事情や観光情報などの問い合わせにも対応する。
 ベルボーイ/ベルガールは、宿泊客の客室への案内やホテルの施設案内などの業務を通じて、ホテル全体を理解することができると共に、お客様が集うロビー周辺で業務を行うために接客機会が多いことなどから、人材養成の効果を狙って新人が配属されることも少なくない。
 お客様に対して身近に接するベルボーイ/ベルガールの印象がそのままホテル全体のサービス評価に反映される可能も高く、ベルボーイ/ベルガールはその責任を自覚して接客に当たる必要がある。

ドアマン(doorman)
 ドアマンは、ホテルの玄関において、お客様を最初に出迎え、最後に見送るホテリエである。ホテルを利用するすべてのお客様に対する送迎、車・タクシーなどの誘導、ならびに玄関周辺の保守などを担当する。
 優れたドアマンは、ホテルを頻繁に利用する顧客や著名な政界・財界の方々の顔、名前、所属先、役職、車の種類やナンバー、あるいは運転手の顔や名前までも記憶する。特に、一斉に訪れ、一斉に帰っていく宴会客に対応して、車やタクシーなどを迅速に、事故なく誘導するという能力は、欧米と比較して宴会件数が多い日本のホテルのドアマンにとって必要不可欠なスキルといえる。
 ホテルの玄関に立つドアマンには、「ホテルの顔」として、ホテルの豪華な建物や玄関周りの混雑に負けない存在感が求められる。

コンシェルジュ(concierge)
 ロビーに特設デスクを構え、館内外の案内や予約の手配など、お客様の様々な要望に応えるホテリエである。日本においては、「アシスタントマネジャー(assistant manager)」、あるいは「ゲストリレーションズ(guest relations)」という名称であることも少なくない。
 コンシェルジュは、街で評判のレストランや専門店、レジャー施設や観光スポットなどに関する情報を常に新しいものに更新しながら、お客様の問い合わせに対応することができるように準備をしていなければならない。また、通常の手配では入手の難しいチケットを確保したり、席を押さえることが難しい繁盛店の予約を取ったりするために、様々な方面に強いコネクションを築いておく必要がある。
 ヨーロッパのホテルを頻繁に利用するお客様には、コンシェルジュは非常に頼れる存在として認識されており、お客様は、日本のホテルのコンシェルジュに対しても、同じ品質のサービスを期待する可能性が高い。日本のホテルのコンシェルジュは、日本人客のみならず外国人客による様々な要望に応えることができるように、国際的レベルにおいて必要とされる情報を整備し、英語などの語学力に磨きをかけておかなければならない。
 「Noと言わないサービス」の象徴、それがコンシェルジュである。

ハウスキーパー(housekeeper)
 客室の清掃および整備、客室の什器・備品の管理、ならびに洗濯物を扱うランドリーサービスや備品の貸出しサービスなどについて責任を持つホテリエである。主に、客室の清掃後の点検や外部委託が進む客室清掃担当者の労務管理などを担当する。
 宿泊客にとって、客室は、完璧に清掃されていて当たり前、完璧に整備されていて当たり前であり、これらが実践されていない場合、ホテルはお客様からマイナスの評価を受ける。すなわち、ハウスキーパーが担うハウスキーピング業務は、宿泊部門が提供するサービスの“基盤”といえるのであり、客室の最終的な点検を行うハウスキーパーには完璧な作業が求められる。
 ハウスキーパーが裏方として、しっかり支えていてくれるからこそ、他の宿泊部門のホテリエたちは“舞台の上で”力を発揮することができるのである。

次回10/10は「レストラン部門のホテリエたち」をお送りいたします。
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