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第8回 2004.2.1
『国際観光の危機管理』・・・ほんとうに心配ないでしょうか?
 前回の本コラムで、これからの日本を取り巻く国際観光について「復活のアウトバウンド」と「飛躍のインバウンド」・・・と申し上げましたが、これらを成功させるために、本日の提言、『国際観光の危機管理』に、是非ご留意願いたいと思います。
 
 まずは、日本人の海外旅行に関して。覚えておられる方がいるかもしれません、2003年が終わろうとする時期に、3回連続して海外のバス事故ニュースが入ってきました。同じデスティネーション(エジプト)で、しかも同じ旅行会社の主催。なによりも、私自身が事故の発生する2カ月前に同じツアーで同じ場所に行きましたので、余計にショックを受けたわけです。その後、事故原因究明の詳細は伝わってきませんが、旅行内容を知っている私として、どうやら人為的なミス―価格競争のヒズミ―ではないかと推測しています。
 ところで、この一連の事故情報だけでなく、近年、海外で発生したテロ、暴動や、地震、台風などの自然災害のほか、航空機や自動車による事故、伝染病、食中毒などの突発事故・事件に日本人旅行客が巻き込まれるケースが増加し、常日頃の危機管理意識が必要とされるようになっています。
 一方、格安航空券や低価格のパッケージ・ツアーの後押しで、海外旅行者が増えてきましたが、最近では、イラク戦争、テロ、そしてSARSなどの影響で人気が落ち込み、さらに“超破格値”のパッケージ・ツアーや格安航空券が街に登場してきています。この現象は、復活のための旅行会社の苦肉の手法のようです。どうやら、エジプトのバス事故発生原因がこれらに関係しているのではないかと思えてなりません。“超破格”の価格はどのように生れるのでしょう。現地のバス会社選定などは価格中心で決定され、また、旅行全般の安全対策の経費が削られるのは、当然予測されます。価格が前面に出たツアーに参加した場合、予期せぬ事故や事件が起きた時には、どのような対応が行われるのでしょうか?こう考えますと、ツアー決定に際しては価格だけでなく、緊急サービス体制や海外拠点の有無などのネットワークも考慮して決めることが、極めて重要だと言うことがわかります。
 
 最近のデータ(下記)によれば、日本人の海外旅行を阻む要因として「治安が心配である」がトップになり、また、2001年のアメリカ同時多発テロ後や2003年のSARS収束後の日本人の海外旅行の復活が世界の中でも最も遅い、ということが話題になっています。
海外旅行の5大阻害要因(2003年)
1 治安が心配である
2 言葉に不安がある
3 飛行機が嫌いである
4 健康に不安がある
5 費用がかかりすぎる
<資料:JTB REPORT 2003>

 しかしながら、日本人海外旅行者の多くは、「心配すれども備えなし」、ストレートな表現でいえば、危機管理意識が薄いのではと思います。例えば、海外に行く際に、
 ・「格安航空券+ホテル」を購入する場合
 ・「パッケージ・ツアー(往復航空券、ホテルのみの単純ツアー)」を購入する場合
この両者を比較したケースでは、特に、事故に遭遇した際の旅行会社/旅行者側双方のそれぞれの責任には雲泥の差があるということです。格安航空券の場合には、旅行者の自己責任がより強く問われることになります。事前の調査・研究がより必要だと言うことです。行く前の備えがあれば、無用な心配をすることもなく、快適な海外旅行ができるのではないでしょうか。
 
 一方、「観光立国」への道を、遅まきながら走り出し、VJC(ビジット・ジャパン・キャンペーン)の標語が、空港やJRの駅で見られるようになった日本ですが、訪日外国人の日本における緊急事態の際の体制はどうなっているのでしょうか。
 現在、外国人誘致に、政府や地方自治体が誘致キャンペーンのために、海外に出かけています。観光地、イベント、施設などのパンフレット〜英語、中国語、ハングルなどに翻訳して〜を持参して宣伝していますが、残念ながら、どこを見ても訪日外国人の危機管理体制に関して書かれていません。現在の日本は、海外から「“安全な国”から“危険な国”」に見られるようになっています。地震や台風など自然災害はどうしようもありませんが、発生後の対応に万全を尽くすことです。また、外国人観光客を巻き込んだ、自動車・列車・航空機などの事故、または病気発生の場合、素早い対応がとれる状態にあるかどうかです。種々の危機に関する対応マニュアルはほとんど日本人向けになっています。また、外国人に対して、十分な情報発信システムになっているでしょうか。特に、病気や交通事故発生に際し、日本人にとってさえも難しい医療対応が、はたして外国人にやさしくなっているでしょうか。
 
 なぜ、今、訪日外国人の危機管理の重要性に関して、注意を喚起するかは次のような理由があるからです。これまでは、訪日外国人の数字が少なく、また、かなりの人々がビジネス出張や親戚・知人訪問の形態で訪日している状況にあり、日本サイドに関係者がいるために、事故・病気に際して、なんとか切り抜けてきています。しかし、小泉首相のアドバルーン「テン・ミリオン」計画の目標である、訪日外国人1,000万人時代となれば、フリーの観光客のシェアがさらに拡大し、この問題が顕在化されてくるからです。また、ウエルカム精神、ホスピタリティなどと呼ばれる“おもてなし”の気持ちを表す具体的なシステム構築が必要であると考えています。安全性のアピールは、海外への誘致宣伝上、他国との差別化を図られるポイントでは、と思っているからです。快適な日本滞在を保証しないかぎり、観光リピーターは育たず、他国への旅行にシフトしていくのは必然ですから。
「YOKOSO! JAPAN」の標語だけでは、外国人は日本にはやってきません。
 本コラムの最後に。2001年のアメリカ同時多発テロの際に、他国に先駆けたニュージーランド首相の「安全性」のアピール行動は印象深く、今も記憶に残っています。<了>
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