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第1回 2003.8.10
ホスピタリティ産業とホテル ― 新しい世紀を迎えて ―
 20世紀がモノの豊かさを追い求めた時代であったとするならば、21世紀はココロの豊かさを追い求める時代となるであろう。例えば、人は単に空腹を満たすためだけに食べものを口に入れるのではなく、家族や友達、恋人といった大切な人と楽しい時間を過ごすために“食事という時間”を消費する。あるいは、人は単に雨露を凌ぐためだけの居住用の建物を求めるのではなく、穏やかで幸福な家庭を築くための“癒しの空間”として「家」を必要とする。

 新しい世紀において、人が日常生活に行き詰ることなく、ココロの豊かさを実感しながら笑顔で生活することができる社会を構築していく上で、「ホスピタリティ産業(hospitality industry)」は重要な役割を担うことが期待されている。ホスピタリティ産業とは、ホテル、レストラン、レジャー施設などの主に情緒的な人的接客サービスを提供する業種の総称である。

 「ホスピタリティ(hospitality)」という言葉は、ラテン語の「ホスペス(hospes:客人の保護者)」の派生語で、現代においては「心からのもてなし」といった意味で使用されているのであるが、この崇高な言語を冠したホスピタリティ産業に従事する人材には、サービスに対する高い志やサービス実務に関する特別な技術・技能が求められることが多い。

 ホスピタリティ産業の象徴ともいえるのが「ホテル」である。前述したように、ホテルで働くスタッフには、人を思いやる心やプロ意識、お客様を満足させるための特殊なスキルが求められる。これらの能力を備えたプロフェッショナルのことを「ホテリエ(hotelier)」と呼ぶ。元々、ホテリエという言葉は、狭義には、ホテルの経営者や投資家を指すものであったが、日本においては、ホテルで働くすべての人を指す広義の意味で定着しつつある。

 ホテルは、リーダーである「総支配人」を始めとして、フロントクラーク、ベルボーイ/ベルガール、ドアマンなどを有する「宿泊部門」、ウェイター/ウェイトレス、ソムリエ、バーテンダーなどを有する「レストラン部門」、宴会予約、宴会サービス、ウエディングプランナーなどを有する「宴会部門」、シェフ、パティシエ、ブランジェなどを有する「調理部門」、セールス、企画、広報などを有する「マーケティング部門」、そして、人事、経理、購買などを有する「管理部門」などによって組織が構成される(図1参照)。
 様々な専門分野を持つホテリエたちが、それぞれの能力を発揮しつつ、協力し合いながら、ホテルという“舞台”を創り上げていくのである。

 このコラムでは、ホテルという“舞台”において、お客様の笑顔を創造する「ホテリエ」という仕事について、ホテリエの職種、各職種の仕事内容や魅力、これから一流のホテリエを目指す人のための学習方法などを紹介していきたい。

次回9/10は「宿泊部門のホテリエたち」をお送りいたします。
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